ルイヴィトンタイガジッピー
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null「するとあの黒人も……」 「あなたと同じ病気の結果だ。彼は三千年を睡って今不滅の生命に至っておる」 「しかしそれをどう証明するのです」  原杖人は落ちくぼんだ目玉をギョロリと光らせた。 「香織様はアルバニアのゲグ族の土地で一体の完全なケルビムを発見されたのです。そしてこの石人の|蘇《そ》|生《せい》に立会われた。石人は蘇生の最終段階で刺細胞を脱落させねばならんのです。香織様はあのイリュリア人から三千年前の病液の最後の一滴をお受けになったのだ。香織様は現代の病祖として、古代の巨石信仰を連綿と持つ秘密結社、イスラム異端のハサン派に護られてひそかに東京へお戻りになられたのです」 「暗殺教団ですか」 「さよう。古代の岩石信仰は、石と化して数千年後に甦える人間を崇め敬まったことに源を発しておる。ドルメンやメンヒルなどはすべてそれだ。特にドルメンは、その巨石の棚に一体のケルビム……つまり石人像を置いて見れば、その建設理由がすぐ判るだろう。エジプトのファラオ達もそれを知っておった。みずからも石と化して来世を得ようと、ミイラのようなはかない技術を用いたわけだ。暗殺教団のような秘密結社に共通するのは、その巨石宗教の名残りですよ。秘密結社の入社式を見たまえ。不安に満ちた|闇《やみ》の世界のさすらいが第一段階で、次に試練……恐怖の試練がやって来る。それは今のあなたを意味しておる。色覚に変調を来し|戦《せん》|慄《りつ》しているじゃろうが。そして次には急激に光の啓示を感じる。それは不滅への希望じゃよ。そして最後にすべてから解放された自由がやって来る。……秘密結社の入社式はこのプロセスを抽象化し、儀式化しているにすぎないのです」 「本当に私は数千年後に不滅の人として甦えることができるのだろうか……」 「それはみんなが案じていることだ。あなたはそのために呼ばれた人間です。ケルビムを保存して数千年の彼方へ旅することができる現代のドルメン……タイムカプセルですな。それを守屋の五つの丘の土地に作るのです」  隅田は両手を握りしめて聞いていた。      6  タイムカプセルを作る。……隅田は三戸田謙介のあいまいな指示の|謎《なぞ》がとけたような気がした。 「そのケルビムとかいう物を数千年の間安全に保存する建物を作るわけですか」 「会長はあなたにどう言っておられたのです」